おとぼけアリの重要性
アリの行列を見たことがありますよね。
小学生の頃、夏になるとアリの行列見たさに庭に菓子を放置し、一匹のアリがそれを見つけてから大行列ができるまでを飽きることなく見ていたことがありました。
池谷裕二氏の「単純な脳、複雑な『私』」という本に興味深い話が載っています。
アリはエサを見つけるとフェロモンを出し、エサの一部を口にくわえて巣に帰るのですが、帰る道筋にフェロモンが落ちていきます。
フェロモンは揮発性かつ誘引性があり、このフェロモンに導かれて、巣にいる他のアリたちが次々とエサのところに行くことで行列ができるのです。
基本的にアリはフェロモンに従って整然と行動する規律を持っているのですが、集団の中にはたまにとぼけたアリがいて、フェロモンとは全然違う方向にふらふらと歩いていってしまいます。
どの巣にもこんなとぼけたアリがいるのですが、進化の過程でなぜそんな非効率とも思えるアリが残ってしまったのかと言えば、そこには大きな理由があるのです。
その理由とは、別のルートにふらふらと行ってしまうアリが、最初にエサを見つけて巣に戻ってきたアリよりも短いルートを見つける可能性があるからなのです。
おとぼけアリが、もしも短いルートでエサを見つけたとすれば、巣の近くに落ちたフェロモン濃度が高い(ここで揮発性であることが効いてきます)ので、他のアリたちが新ルートに行列を変更するようになるのです。
100点満点のパーフェクトなアリ集団は、一見すると完璧で最強グループのような気がするけれど、結果としてはもっと効率的なルートを失うことにもなりかねない。周囲と行動を共にしない仲間がいることで、偶然にも効率的なルートが見つかる可能性を残しておく。そんな仕組みがアリには備わっているのです。
FEDEXは、このアリにヒントを得て、宅配便のアルゴリズムを開発しました。
ある地点から別の地点に荷物を運ぶ場合、最短と思われるルートだけを採用していると、特定の倉庫に荷物が集中したりして必ずしも効率的はないことがあり、一部の荷物をランダムに動かしてみたところ、最終的に最適な運搬経路を発見できたのだそうです。
以上が池谷氏の著書に載っていた話ですが、企業においても優秀で規律正しい連中ばかりを集めれば、一見凄い精鋭部隊ができるかも知れませんが、とんでもない大失敗をすることもあります。
以前にも書きましたが、ノーベル賞級の人材を集めたヘッジファンドLTCMの破綻などは、精鋭が大失敗をしでかした典型ではないでしょうか。
カリスマトップの下で一糸乱れぬ統制が取れている会社というのも、良い時はものすごい成長をしますが、何かが起きると一気に破綻してしまう・・・そんな例は枚挙に暇がありませんよね。
生物の世界は、多様性があることで全体が絶滅する危険性を減らしていると言います。
どんな巣にもおとぼけアリが存在していることで、むしろ全体最適になる可能性がある。
企業にも通じることのように思えますね。
私はオタク社員の存在に、それを感じます。
一見すると会社の成長や目標などに無関心のように見えるのだが、何やら真剣にやっている。
そんなオタク社員の存在が、時に飛んでもない新規事業への芽を見つける可能性にもつながるのではないかという気がするのです。
企業もまた生き物であり、生物界の生存戦略が適応できる部分は随分とあるように思います。
おとぼけアリ(オタク社員)が社内にいるとすれば、少しじっくりと観察してあげる余裕が必要なのではないか、そんな気がしてきました。


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